「不妊ルーム」物語

No.5 不妊治療シンドローム

◆不妊治療シンドロームとは?

不妊治療を受け始めたら、気をつけておかなければならないことがあります。それは夫婦生活を持つということが、子づくりのためだけになってしまいやすいということです。また、不妊治療のステップアップの結果、セックスレスになってしまうカップルもいます。私はこうした状態を、不妊治療シンドロームと呼んでいます。何年間も不妊治療に通っているひとほどこの傾向は顕著になります。

 スギ花粉症のシーズン中に「薬が効かなくなった」といって医師のもとを訪れる鼻炎のひとが多くいます。これは、点鼻薬の使いすぎです。このような症状は「点鼻薬性鼻炎」などと呼ばれます。これと同じように、不妊治療を受けて、不妊治療そのものがストレスとなり、さらに不妊症を悪化させてしまうという「不妊治療不妊」の方も多くいます。私もこれまでに不妊治療をやめたら妊娠したという方を多く知っています。これらの方は、もともと妊娠する能力は備わっていたのに、夫婦の歯車がかみあわず妊娠できず、そこに不妊治療がストレスをかけて、さらに状況を悪くしてしまったと考えられます。

 不妊治療の初期の段階で、タイミング法による夫婦生活の指導がおこなわれますが、医師はもっとも妊娠する確率の高い日をポイントアウトします。しかしこのことは、ほかの日にセックスするなということではありません。ある女性のお話では、「不妊治療を受けて、長らくタイミング指導を受けているが、ドクターの指定した日にしかセックスをしなくなってしまった。この習慣から抜け出すにはしばらく時間が必要です」と言われます。こういう状況では、妊娠は遠のくと思います。さらに、人工授精まで進むと、この傾向はいっそう顕著になり、体外受精を受けているカップルでは、セックスレスの夫婦も少なくありません。これは、自分たちは人工授精でしか妊娠が期待できず、通常のセックスでは、妊娠はあり得ないという思いこみがあるからです。これは多くの場合、本当に思いこみです。

 私が経験した例ですが、男性が20歳の時に、バイクの事故で脊髄損傷をうけ、男性機能が著しくそこなわれ、精液量が通常の1/5~1/10程度なのです。幸いなことに、精子の質の問題はありませんでした。計算上は人工授精で妊娠ができるかどうかのぎりぎりの線だと思いました。一方、女性側には不妊に関する問題はありませんでした。それで、人工授精も体外受精も行える不妊治療の医療機関を紹介しました。紹介先の医療機関から、近々人工授精をおこないますという返事をもらい、それっきりになっていました。それからだいぶたって、ご主人が風邪でひょっこり来院されました。診察のあとでそれとなく、「奥さんはいかがですか?」と尋ねると、「妊娠8ヶ月です」という返事です。それで、「人工授精がうまくいったのですか?」と尋ねると、「あそこの病院には1回行っただけで、そのあとすぐに、自然に妊娠しました」という答えに2度驚きました。

 私は、男性因子(精液検査)が正常で、基礎体温が安定していて、卵管が通っていれば、妊娠はあり得ると思います。ですから、現在不妊治療を受けているということは、多くの場合、自然妊娠の可能性を否定するものではないのです。このことは本当に大切なことです。

◆思いこみ症候群も要注意!

 また、思いこみ症候群にも、要注意です。一度精液検査を受けて、結果が悪かった男性が、自分は男性機能が劣っているという思いこみを持つ方が多くいます。こういう場合は、悩む前にもう一度再検査を受けることをおすすめします。精液検査は体調や、採精の状況によって非常に変動するということを知っておいてください。また、女性の方も、高温期に黄体ホルモンの値を一度測定して値が低いと、黄体機能不全と思いこんでいる方もしばしば経験します。黄体ホルモンの値は月経周期とのかねあいで非常に変動します。どのタイミングで採血したのかということがとても重要なのです。また、一度値が悪くても、何回か繰り返して検査を受ける必要があります。

 ある医療機関で、卵管の片方が閉塞して、もう一方も通りが悪いといわれていた患者さんがいました。それで、別の不妊の専門医療機関で体外受精を4回おこないました。残念なことに、この医療機関では、子宮卵管造影の設備がありませんでした。それで、私が相談を受けたのですが、もう一度卵管の通過性を確認すべく、婦人科の先生に子宮卵管造影をお願いしたところ、両方の卵管の通過性が確認されたのです。それで、タイミング指導をしたのですが、2ヶ月で妊娠にいたいりました。この方も、自分は卵管が詰まっているので、通常の妊娠は望めないとずっと思いこんでいたのです。

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